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生成AI活用で、いま本当に求められる「思考力」── 東北に根付いた企業として、現場目線で考える

今回から弊社ICHICOのホームページで、AIに関するコラムを連載していきます。

第1回のテーマは「生成AI活用において求められる思考」です。なぜ最初にこのテーマを選んだのか。それは、私がこの1年、数多くの生成AI関連のセミナーやイベントに参加し、東北の企業のAI活用状況をヒアリングしてきたなかで、いちばん強く感じた論点だからです。多くの企業がAIを「導入」しています。けれど、成果につながっている企業と、そうではない企業の差は、ツールではないところにありました。

「導入」を目的にした瞬間、つまずきが始まる

まず、私が現場で感じた感覚をお伝えすると、。東北の企業の多くは、生成AIに対してとてもポジティブです。「何かが変わるかもしれない」という期待から、まずは導入することを目的にし、その大半が業務の削減・効率化に主眼を置いています。

この姿勢自体は、決して悪いものではありません。ただ、「導入」と「効率化」だけを目的にすると、いくつかのつまずきが起きやすい、というのが私の実感です。

それを裏づけるデータがあります。帝国データバンクが2026年5月14日に公表した「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」です。AI活用の情報発信で知られる「いけとも」氏も、2026年5月17日公開の動画でこの調査を取り上げていました。

調査によると、生成AIを「活用している」企業は34.5%。そのうち86.7%が「業務への効果が出ている」と回答しています。使えば効果は実感できる、という状況です。一方で、見過ごせない数字も並びます。生成AI活用の懸念・課題として挙がった上位は、次のとおりです。

 

「活用すべき業務の範囲」が定まらず、「人による最終判断」や「情報管理のルール」「出力を検証する教育」が不確かなまま走り出す。その結果として、別の設問では「AIを使いこなせる社員と使いこなせない社員の間で、能力や成果の格差が拡大した」と答えた企業が18.8%(大企業では23.6%)にのぼりました。帝国データバンク自身も、生成AIは導入の有効性よりも「使いこなすための仕組みづくり」が成果を左右する段階に入った、とまとめています。

 

私のヒアリングでも同じ構造が見えました。さらに、うまく使いこなせた場合でも自社の事業と関係のない使い方や組織として承認されていないツールや活用方法、いわゆる「シャドーAI」が横行していたりします。こうなると、せっかく業務で使いこなせているユーザーに対しても社内に反発や不信感が生まれ、AI活用がかえって広がらない、というジレンマに陥ります。

1年間推進してきて感じた、足りないのは「問いの設計力」

私は昨年6月から、ICHICO社内で本格的に生成AI活用を推進する立場になりました。1年が経って感じているのは、足りないのはツールでも知識でもなく、「問いや課題、仮説を設計する力」だということです。

分かりやすい例を挙げます。多くの企業は「AIを活用したら、業務が効率化できるはずだ」と考えます。けれど、本来立てるべき問いは逆向きです。「業務効率化や顧客満足の向上に向けて、そもそもAIを使うべきなのか。使うとしたら、どこでどう使うのか」。前者は手段から入る発想、後者は目的から入る発想です。後者でなければ、AIは「とりあえず入れたもの」で止まってしまいます。

もう一つ、見落とされやすい論点があります。「ナレッジギャップ」です。

私たち人間は普段、無意識のうちに膨大な情報をもとに仕事をしています。弊社における広告やプロモーション業務では、過去の良い提案資料、クライアントの前提情報、社内ミーティングでの会話、メディアや広告の特性、それらを記憶した自分自身の脳内情報、こうした「暗黙知」が、検討・判断の土台になっています。ところが、AIに伝えているのは、その時に思いついたほんの一握りの情報だけです。本来与えるべき情報量と、実際に与えている情報量。この差が、出力の質を決めてしまいます。

最近は、この差を「コンテキストエンジニアリング」、つまりAIに前提や背景を丁寧に渡す手法で埋めようとする動きが広がっています。これはAI活用においてとても有効です。ただ、これもあくまで手法の一つでしかありません。渡すべきコンテキストそのものも、「なぜ(Why)」「誰に(Who)」「何を(What)」「どうやって(How)」の解像度が高くなければ、精度は上がりません。

つまり、AIをうまく使えるかどうかは、AIに渡す前の「思考」でほぼ決まります。AIは文章の粗さは補ってくれますが、前提・意図・評価基準の欠落は補えません。そこは、あくまでも人間の仕事です。

効率化は「過程」にすぎない ── 人間が担うべきは「意味の発明」

ここで、マーケティングやブランディングの話に接続させます。

ノバセル株式会社CEOの田部正樹氏が、自身のnoteで印象的なことを書いています。
これからの時代に人間が担うべきは「意味の発明」と「属人性の移植」だ、と。
私なりに解釈すると、新しい価値の意味づけを生み出すこと、そして特定の人にしか出せない知見や感覚を形にして引き継いでいくこと。これらこそが、企業の価値創出のレバレッジになる、という考え方です。

裏を返せば、業務の効率化は「過程」にすぎません。効率化そのものは、コスト削減として損益計算書に反映されるだけで、それ自体が新しい価値を生むわけではない。私もこの見方に強く共感します。

では、マーケティングや広告に携わる私たちにとって、「意味の発明」を支える思考とは何か。私は、マーケティングの思考プロセスそのものだと考えています。環境分析から課題を特定し、誰に何をどう届けるかを設計する。この一連の思考プロセスは、実はそのまま、AIに渡すべき「思考の骨格」になります。

AIの登場で、マーケターの思考力が不要になるのではありません。むしろ逆だと考えています。良い問いを立て、本質を捉え、構想する力があってこそ、AIははじめて戦力になります。ものごとの本質を捉える力、それを構想する力、そして実行する力。この3つがあってこそのAI活用だと、私は思います。

「ローカルには無理」ではなく「ローカルだからこそ」

この話は、東北の企業にこそ届けたいと思っています。

「AI活用なんて、都市部の大企業の話だろう」。そう感じる経営者の方は、少なくないかもしれません。けれど私は、むしろ「ローカルだからこそ」の可能性があると考えています。理由は2つあります。

1つは、ここまで述べてきたとおり、AI活用の成否を分けるのは思考力であり、思考力は資本の大きさで決まるものではないからです。自社の事業を深く理解し、良い問いを立てられる経営者・担当者がいれば、規模に関係なく成果を出せます。

もう1つは、東北の地場産業—観光、食、地酒、伝統工芸、製造—には、他にはない「暗黙知」と「物語」が豊富に眠っているからです。先ほど、AI活用の鍵は暗黙知をどう言語化して渡すかだとお伝えしました。その原資を、東北の企業はもともと持っています。問題は、それを引き出し、設計する思考のプロセスがあるかどうかです。

「効率化のためのAI」で止まるのか。それとも「自社の価値を再発明するためのAI」へ進むのか。この分岐は、企業規模ではなく、思考から入れたかどうかで決まります。

ICHICOは「思考から入るAI活用」を伴走します

ICHICOは、この「思考」を何より大切にしています。

弊社では、AIと思考力を接続させた勉強会を繰り返し開いています。単なるプロンプトの書き方を学ぶ会ではなく、マーケティングの思考プロセスを土台に、「どう問いを立て、どう仮説を設計するか」を全員で鍛える場として実施しています。目指しているのは、社員一人ひとりが、マーケティングコミュニケーションにおける意思と実行を示せる集団になることです。

その考え方は、社外への支援でも同じです。一例として、今年2月の「仙台X-TECHイノベーションアワード2026」でも発表した葬祭事業会社さまのAIチャットボット導入を支援したプロジェクトがあります。

この取り組みのポイントは、いきなりAIやデータの話から入らなかったことです。多くの企業がそうであるように、出発点では「AIで何をすべきか」はまだ明確に定まっていませんでした。まずは葬祭事業を取り巻くマクロ環境の分析、顧客理解、課題の構造化を行い、「どこにAIを適用すればこの企業が最も価値を発揮できるか」を見極めたうえで、AIチャットボットの試作・検証へと進みました。実際に開発したプロトタイプは現場の社員の方からも大変前向きな声をいただきました。順番として、思考や意思が先、手段・手法は後。これがICHICOの基本姿勢です。

 

AIを「使いこなす」ことで、顧客の事業成功と地域の活性化へ

生成AIは、強力な道具です。ただ、道具に使われるのではなく、道具を使いこなす側でありたい。そのために必要なのが、本質を捉え、構想し、実行する思考力だと、私は考えています。

ICHICOは、AIを使いこなす力で、私たちのミッションである「顧客の事業成功」と「地域活性化への貢献」を、これからも推し進めていきます。AIをどこから・どう活かすべきか迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。

AI・デジタル領域の支援内容は、こちらのページをご覧ください。

▶ ICHICO AI・デジタル支援:https://www.ichico.co.jp/solution/aidigital/

 


出典

 


執筆:萩 雄斗(プランナー兼AI推進リーダー) 

大手広告会社でテレビCMのバイイングやメディアプランニングを担当。2025年に弊社入社後は、マーケティング全般のプランニングと社内外のAI導入や活用推進も兼務。 公開日:2026年6月11日

 

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